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2024.04.08

海の食の課題と、私たちができること。

わかめをはじめとする日本の海産物に新たな価値を生み出し、サステナブルな第一次産業に挑戦中の「よせてはかえす」が、からだに優しく美味しい食生活を提案する YUWAERU さんにてイベントを開催しました。

当日は、「みんなで繋がって、日本を盛り上げていきましょう!」と、木本硝子・代表の木本さんが朗らかに通る声で乾杯挨拶をしてくださってスタート。事前のアンケートでは、「食文化についてもっと知りたい」「生産者の話を聞いたり、フードロスについて学びたい」と回答してくれた方が、参加者の 70% 近くに上りました。

乾杯のご挨拶をしてくださった木本硝子・木本さん

牡蠣やマグロ、たこやわかめなど、豊かな三陸の海産物と、YUWAERU さんオリジナルのもっちもちの食感の ”寝かせ玄米® ” をいただいて、美味しい!とわいわい盛り上がりながら、日本の海の食の課題を学び、ふと手に取る食材や日々の食事について改めて考えてみる。そんな機会になればと企画した本イベントの様子を、よせてはかえすのメンバー・森原まやの視点でお届けします!

課題先進地としての気づき

宮城・石巻のわかめ漁師で、よせてはかえすのメンバーでもある阿部勝太さんは、2011 年の東日本大震災を経験。その復興の過程で、被災した宮城・岩手・福島の同業者たちと話し、みんなが自分と同じように課題を抱え、それぞれに解決しようと苦戦していたことに気づいたそう。

石巻の自家製塩ウニと寝かせ玄米

災害が起こることによって、地域を含めた様々な脆弱性が露呈し、普段は見えにくい課題が明確になるため、被災地は「課題先進地」と言わます。それは、必ずしも災害があった場所に起こるとは限らず、近い未来に全国どこでも起こりうるということ。みんなで改めて話し合い、明らかになった漁業の課題は大きく2つ。獲る人や育てる人がいないこと、そして、そのための環境がなくなってきていることでした。

  1. 高齢化による人手不足
    • 漁業従事者の平均年齢は60歳を超え、70代になると漁業からは引退するケースが多いそう。この先10年くらいで、一気に漁業に携わる人たちが減るということでもある。
  2. 海の環境の悪化
    • 気候変動の影響で海水温が上がり、磯焼けが進んでいる。海の中の生態系のバランスが崩れ、これまで獲れていたものが取れなくなってきている。
南三陸・戸倉産の牡蠣

漁師は本来、個人事業主が多い職業。だからこそ、こうした大きな課題を抱えながらも、それぞれが個別に葛藤している背景がありました。そこで勝太さんは、個人で立ち向かうのではなく、みんなで解決に向けて動いたらどうかという想いから、「フィッシャーマン・ジャパン」を発足。当初こそ、漁業の復興が目的だったけれど、課題先進地としてこれからの日本の未来へ起こりうる漁業への課題解決につながること、活かせることがきっとあるはずだと語ります。活動を通して、視座が上がっていったことが伺えました。

2014年のフィッシャーマン・ジャパン発足から、はや10年。現在では、生産現場だけではなく消費者に届けられるまでの流通網に対する働きかけ、未来を担う若者たちへ魅力的な漁業を伝えたいという想いから、若者向けの漁業体験プログラムやマッチング、地方の抱える漁港の課題を解決する取り組み、それからもっと日本の海産物を食べようという魚食普及など、幅広く様々な活動を行っています。

みんなに語りかける、漁師の阿部勝太さん

IUU(違法漁業)って?

「海にまつわる課題は、他にもあります。例えばみなさん、IUU って聞いたことありますか?」

勝太さんが投げかけると、うーん、とみなさん首を傾げました。あまり聞きなれない言葉ですよね。

IUU 漁業とは、「Illegal(違法)」、「Unreported(無報告)」、「Unregulated(無規制)」の頭文字を取った略語で、違法・無報告・無規制で行われる漁業を指します。現代の海賊のような存在と言えば、イメージがつきやすいかもしれません。

乱獲など国際的な漁業規則や、各国の漁業法を無視して行われる漁業であり、水産資源の持続可能性だけでなく、海洋環境や国際経済にも深刻な影響を与えています。

大船渡産のやなぎ蛸

IUU 漁業は、世界の漁獲量の最大20%を占めると推定されており、日本でも、実は6尾に1尾が違法に獲られたものだそう。ヨーロッパでは「トレースができないこと」は厳しく管理されているため、IUU 漁業によって獲られた海産物は市場に出回りません。近年では、アメリカもこの考えに追従する形で、規則の整備を行っているそうです。

ところが、日本は “ざる” だと勝太さんは続けます。問屋や商社が多くあり、追跡しきれないのが現状。また、「美味しくて安い」が当たり前のこの国では、たとえルートが正規のものでなくとも、安いものが選ばれてしまったり、安い食材が出回ることで、正しくサステナブルな方法で獲ったものが買い叩かれてしまうケースもあるそうです。

豊かな海にぐるりと囲まれた島国として、法の整備によって、日本の水産業が守られないものかと願う一方で、私たちのできることとしては、手に取る食材がどこから来たものなのか、見て選ぶという、買う側の意識の持ち方にあります。

例えば、去年は、海水温の上昇と台風による被害でワカメの漁獲量が10%も減少。その分価格は高騰します。でも、もしいつもと同じ価格のワカメが出回っていたとしたら、産地の記載がなければ IUU によるものかもしれないし、もしくは買い叩かれてしまったのかもしれない。手に取るときに、産地をチェックしてみたり、想像してみると、選ぶものが変わってきますね。

石巻の早採れワカメ

廃棄される食材を買い支え、経済を回していく

さて、今回のイベントでは、よせてはかえすとして初めての商品として、海藻をアップサイクルしたふりかけとスープをお披露目しました。買ってくださったみなさん、ありがとうございました!(ECなどでも買っていただけるように準備中です!ぜひお楽しみに!)

利用したのは、栄養価は同じなのに、穴が空いているだけで価値がつかなくなってしまう「穴あきわかめ」。そして、見栄えも不揃いで使われないまま廃棄される「昆布の根元」。価値が付かないと捨てることになったとしても、育てる手間や、廃棄される部分との切り分け作業など、全て人の工数と時間が費やされているもの。そしてそれらは、そのまま大量の廃棄物になってしまうということ。私たち消費者はには見えづらいですが、実際には、使われなかった食材や食べられなかった加工品だけではなく、市場に出回る前に、フードロスとしてカウントもされる前に廃棄されるものが大量にあるんです。

市場で価値が付かないからと、なかったことにするのではなく、新しい価値を生み出すことができたら。そんな想いから、よせてはかえすは、こういった商品の開発も進めています。廃棄される食材を買い支えることで、フードロスをなくし、環境への負荷を軽減し、さらには経済を回すことで、漁業従事者に正しい対価が払われることも目指していきます。

廃棄される海藻をアップサイクルしたふりかけとスープ

「日本の海産物の課題」と聞くと、どこか遠い、他人ごとのように思えてしまうかもしれません。でも、実際にはスーパーに並ぶ食材も、コンビニやお店で使われている食材も、私たちが手にして、口に入れるもの。体と心も喜ぶ美味しいものをいただきながら、生産者さんへの感謝とリスペクトを伝えられる選択をするために、私たちができることは何か?ぜひ、みなさんと一緒に考え、アクションにしていけると嬉しいです!

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*よせてはかえすの活動が気になった方、応援してくださる方、最新のイベント情報などを知りたい方は、Facebook グループ「よせてはかえすの仲間たち」にぜひご参加ください。招待制のため、リクエストをお送りください。

*よせてはかえすは、海産物をはじめとする日本の食文化を守るため、自然が生み出す美味しい食材を見つけ、作り手の魅力を最大限に引き出す商品をつくり、その価値を伝え、お届けしていきます。海産物の商品開発やOEM等のご相談も可能です。ぜひお問い合わせください。